大学生の頃、同じクラスに変わった男の子がいました。
演劇が好きで、時々友達と一緒に素人演劇集団の舞台に立っていて、演技をしている時はとても格好良いのに、普段は気が小さくてオドオドしている、猫背の男の子でした。前髪が長くて目を隠している感じで、暗い印象を抱かせるような格好が勿体ないなと思っていました。
その子は音楽も好きでした。友達が多くて交流の範囲も広かったので、音楽関係の知り合いと一緒にライブに出る事もありました。ボーカルとして歌を唄う彼は、やっぱり舞台の上ではとても格好良い男の子でした。
普段は気が小さくて俯きがちですが、心はとても優しい男の子でした。人見知りであまり友達のいない私にも、色々な話をしてくれました。その子は本当に幅広い知識を持っていて、私の質問には何でも答えてくれました。その子は私の知らない事を、ちっとも嫌がらずにたくさん教えてくれました。
私が進路で悩んで泣いている時、傍にいて慰めてくれました。
恋についてはよく分かりませんでしたが、彼ともっと一緒にいられたら良いなと思うようになりました。
でも、彼には好きな子がいるようでした。
大学の先輩が「デートに誘ってみればいいのに」と気軽に言いましたが、私にはそんな勇気はありませんでした。
結局、彼に何も言えないままお互い大学を卒業して、それきり会っていません。
もう私は結婚してしまいましたが、今でも時々、フラれても良いから告白すれば良かったなと後悔しています。